生き残るための仕組み

女性のオーガズムのヒクヒクはなぜあるか?

産むか産まないかの最終決定権は女性にある。妊娠成功率を格段に高める秘訣も解説

富士高原
Jan 2, 2021

生き物の体の仕組みは、例外なく生き残るためにあります。私は、ヒトの体の仕組みが、生き残るためにどのように役に立っているかを、進化の視点から考えるのが癖になっています。

今回は、性交時の女性の生殖器の働きに焦点を当てて、生き残るための仕組みを考えていきます。

みなさんは学校の保健体育の授業で次のような美談を教わったことはありませんか。「卵子は膣から遠くはなれた場所あります。精子たちは、卵子を目指して、命がけの長旅をします。精子たちの競争です。ようやく卵子にたどり着いた一匹の精子だけが卵子との受精の恩恵に与ることができます。精子が卵子と出会うのは奇跡的なことです。だから今ここにいるあなた達は、奇跡がもたらしたかけがえのない命なのです。」

しかし、この美談は真実ではありません。

アダルトビデオでは、女性がオーガズムに達すると、体をヒクヒク震わせるような場面がみられます。さすがにあれは男性視聴者の性的興奮をかき立てるための大袈裟な演出だとしても、オーガズムに達すると、女性の子宮はヒクヒク痙攣しています。

これは何のためにあるでしょうか?カンのいい人なら、察しがつくでしょう。正解は、精液を吸い上げるためです。

オーガズムの子宮のヒクヒクは、射精された精液をスポイトのように吸い上げて、卵子まで運ぶためにある。

はい、もう分かりましたね。先ほどの美談がウソである理由を。精子が泳いで卵子に到達するのではなく、真実は、子宮が精子を吸い上げて卵子まで運んであげているのです。女性がオーガズムに達して精液を吸い上げたときは、卵子の周囲は、むしろたくさんの精子でうじゃうじゃしているのです。そもそも精子が泳いで卵子に到達するなんてむちゃな話です。

女性がオーガズムに達したときにヒクヒクするのは、子宮だけではありませんね。経験のある男性諸君はよくご存じでしょう、腟もヒクヒクしています。では、この膣のヒクヒクは何のためにあるでしょうか?

答えは、男性の射精を促すためです。女性のほうから、「ほら、今、このタイミングで射精しないさい。」とそそのかしているのです。

オーガズムの膣のヒクヒクは、ペニスを刺激して同時での射精を促している。

ではなぜ、男性のペースで射精させるのではなく、女性のほうから射精をそそのかすのでしょうか?

それは、同時に射精させて、精液をすぐさま吸い上げるためです。

オーガズムに達したときの女性生殖器の本能の声を言葉にしてみます。「私は、あなたの子供を妊娠したいのよ。ほらペニスを刺激するから、今すぐ射精しなさい。あなたの精子を吸い上げて卵子まで運ぶわよ。」

ペニスの本能の声も言葉にしてみましょう。「自分のペースで発射しようと思ってたのに、うわー、なんだー、気持ちいい、あれれー(ドピュ)。」

女性は、嫌いな男とセックスしているときは、オーガズムには達しません。精子が泳いで自力で卵子にたどり着くのは不可能です。だから妊娠なんてしません。レイプ被害の妊娠確率が極めて低いのもこのためです。一方、大好きな男性とのセックスなら、オーガズムに達します。女性は、腟をヒクヒクさせて射精を促し、子宮がすぐさま精液を吸い上げます。卵子の周りは精子でいっぱいになり妊娠します。

女性が「この男性の子供を産みたいわ」という気持ちでセックスすれば、オーガズムに達しやすくなるし「こんな男の子供なんてまっぴら」という気持ちでセックスすれば、オーガズムには達しません。産むか産まないかは、結局、女性が決めているのです。

男性諸君、自分が精子を注入して妊娠させた、と思っていたでしょう。現実は違ったのです。女性に上手に操られていたのですよ。産むか産まないかは、最終決定権は女性にあるのです。

男女が同時にオーガズムに達したときが、妊娠確率が最大になります。女性がオーガズムに達しない場合は、精子を吸い上げるスポイト効果が全く働かないため、妊娠確率は極めて低くなります。

ここまで「産むか産まないかの最終決定権は女性にある。」ことは理解できたと思います。しかしまだまだです。女性生殖器の奥深い仕組みは、この程度では終わりません。女性生殖器には、好みの男性の精子以外は徹底的に排除する仕組みがいくつもあります。少々込み入った話になりますが、頑張って読み進んでみてください。不妊に悩んでいるカップルは読んで損は絶対にありません。妊娠成功率を格段に高めることができますよ。

ヒトがまだ野生動物だったころは、一夫一婦の結婚制度なんてなかったし、オスとメスはもっと自由に交尾をして乱交的でした。オスの方が腕力が強いので、メスが嫌がってもオスが無理やり交尾することは、珍しいことはありませんでした。でも、メスだってオスをちゃんと選びたいはずです。自分の血筋を繁栄させるためには、強くて健康なオスの子供を産みたいはずです。だから、メスは、気に入らないオスの精子を、完全に拒絶する仕組みを発達させました。メスはしたたかにオスを選別して、産む・産まないの選択をしています。

女性生殖器には、精子を卵子に寄せ付けないための5重のブロックシステムがある。

通常時は5つの精子ブロックシステムはすべて閉じていて、精子を拒絶するようになっています。

精子ブロックシステムを理解する準備として、女性生殖器の解剖を解説します。女性生殖器を人間の体全体にたとえます。手のひらをパーに開いて両腕を真横に伸ばして足を閉じて直立した状態を想像してください。Tの字の姿勢です。そうすると両脚が膣、胴体が子宮、両腕が卵管、パーに開いた手のひらが卵管膨大部、指が卵管采になります。ちなみに卵巣は、パーの手の指先から少し離れたところにあります。ちなみに、卵管と卵巣が直結されていないのは、大切な卵子の貯蔵庫である卵巣にバイキンが入らないように守るためです。膣や子宮には、尿道や肛門からのバイキンが侵入しやすいですから。

下から上にみていくと、膣(脚)→子宮(胴体)→卵管(腕)→卵管膨大部(手のひら)→卵管采(パーの指)→卵巣となります。

女性生殖器の解剖を理解したところで質問です。卵子と精子の出会いである受精はどこで行われているでしょうか?

a.膣、 b.子宮 、c.卵管、 d.卵管膨大部、 e.卵管采、 f.卵巣

正解はdの卵管膨大部です。膣から遠く離れた位置にあります。排卵日になると、卵巣から卵子が排卵され、卵管采の指が卵子をキャッチして、すぐ近くの卵管膨大部に卵子を留め置きます。受精はそこで行われます。頭がゴチャゴチャした方は、卵子は膣から一番遠いところに留め置かれることだけ頭に入れてください。

1つ目のブロックシステムから順に説明します。
さて、腟がある最大の目的は何でしょうか?

正解は、ペニスをブロックするためです。腟は約7cmの筒状の筋肉の塊です。好みでない男性が無理やりペニスを押し込もうとしたときに、ギュッと膣をしっかり閉じて、ペニスの挿入を阻止するために強い筋肉でできています。

1つ目の精子ブロックシステムは、筋肉でできた腟です。

— — —

次に2つ目のブロックシステムです。
質問です。普段、膣の中は何性(酸性・中性・アルカリ性)でしょうか?

答えは、酸性です。それも、やや強めの酸性です。

膣内にはデーデルライン桿菌という乳酸菌が住み着いています。乳酸菌は、その名の通り乳酸を産生します。乳酸は酸性物質なので、そのおかげで腟内が酸性に保たれます。女性の膣口の近くには、肛門も尿道口もあり病原体がウヨウヨしています。大抵の病原体は酸性環境では生きていけません。善玉菌である乳酸菌をあえて膣内に住まわせることで、悪玉菌である病原体を締め出してて、腟を守っています。

質問です。精液は何性(酸性・中性・アルカリ性)でしょうか?

精液は弱アルカリ性です。精子は弱アルカリ性の環境だと元気に活動できますが、酸性だと死んでしまいます。だから精子は酸性環境の膣の中では死んでしまいます。精子は病原体と同様な扱いというわけです。

2つ目の精子ブロックシステムは、腟内の酸性環境です。

— — —

次に3つ目のブロックシステムです。
膣だけでなく子宮も筋肉でできています。子宮は筋肉の塊と言ってもよいでしょう。普段は筋肉が収縮して内腔がピッタリ閉じられています。腟に近い部分の子宮頸部は、特に分厚い筋肉でできていて、子宮内への異物の侵入を阻止するための厳重な関所になっています。もちろん精子も完全にブロックしています。

3つ目の精子ブロックシステムは子宮の完全密閉です。

— — —

次に4つ目のブロックシステムです。子宮や膣は粘膜で出来ていて、粘膜からは分泌液がじわじわ滲み出ています。その分泌液は上から下に流れるようになっています。子宮の中をよじ登って来ようとする病原体や精子を、下に押し流すようになっています。精子は水洗便所のうんこと同様の扱いというわけです。

4つ目の精子ブロックシステムは分泌液による押し流しです。

— — —

次に5つ目のブロックシステムです。受精は膣から一番遠い卵管膨大部で行われると説明しました。排卵のあと卵子を子宮まで運んでおけば、精子はもっと容易に卵子にたどりつけるのに、あえて膣から一番遠い卵管膨大部に卵子を留め置きます。これは、精子が容易に卵子にだどりつけないようにする作戦です。

5つめの精子ブロックシステムは卵子までの長距離です。

— — —

以上で5つの精子ブロックシステムが出そろいました。復習すると1.膣、2.酸性環境、3.子宮密閉、4.押し流し、5.長距離です。

通常状態では、女性生殖器は5つのブロックシステムをオンにして、精子を完全に拒絶しています。

メスは、大好きなオスと交尾したときだけ、すべての精子ブロックシステムを解除して、精子を大歓迎で向かい入れます。それでは今度は、ブロック解除の仕組みをみていきましょう。

1つ目のブロック解除です。女性は好みの男性とセックスをし始めると、子宮や膣の壁から分泌液を出します。巷の言葉でいうと「濡れる」とか「愛液」というやつです。愛液には膣を潤滑してペニスの挿入をスムーズにする働きがあります。相手が好みの男性であればあるほど、愛液が溢れ出て、膣は弛緩しペニスの挿入が容易になります。こうして1つ目の膣のブロックシステムが解除されました。女性は、好みの男性のペニスを大歓迎で迎い入れます。

ヒトが野生生活を送っていたころは、乱交的だったので、腟の中には直前に交尾したオスの精液が残っていることがあります。愛液には、腟の中に残っている他のオスの精液を押し流す働きもあります。

次に2つ目のブロック解除です。膣は酸性に保たれることにより精子をブロックしています。女性がオーガズムに達すると、その瞬間に劇的なことが起こります。膣の中が、弱酸性から一気に弱アルカリ性に変化します。女性は、膣の中を、精子が元気でいられる弱アルカリ性に変化させて、精子を最高の環境で迎え入れるわけです。

3の子宮密閉、4の押し流し、5の長距離のブロックシステムは、オーガズムに達したときの子宮のヒクヒクのスポイト効果ですべてクリアされます。密閉されていた子宮はがばがばに緩み、精液を卵管膨大部の卵子のところまで吸い上げます。

女性のオーガズムで起こる変化をもう一度整理します。1.腟をヒクヒクさせてオスの射精を促します。2.腟と子宮内を瞬間的に弱アルカリ性化します。3.子宮をヒクヒクさせて精液を一気に卵子がある卵管膨大部まで吸い上げます。

このように「この男性の子供が欲しい。」と思って女性がセックスしていれば、女性は気持ちよくなって男女が同時にオーガズムに達します。そして卵子の周りは精子だらけになります。一方「こんな男の子供なんて欲しくない。」と思ってセックスしていれば、女性はオーガズムに達しないまま、射精されます。精子は膣の中に留まり酸性の海でどんどん焼け死んでいきます。

オスのほうが腕力が強いので、オスがメスを選んで妊娠させていると、ほとんどの方は思っていたでしょう。しかし真実は、さにあらず。最終決定権は女性が握っていたのです。女性はしたたかですね。

最後に、妊娠成功率を上げるコツをお教えします。

妊娠が成功するには、女性がオーガズムに達することが必須です。かつ男女が同時にオーガズムに達したときに、妊娠成功率が最大になります。

でも、どうしても同時にいけないカップルもいるかもしれません。その場合は、次のどちらが妊娠確率が上がるでしょうか?

a. 男が先、女が後

b. 女が先、男が後

ここまでの話をちゃんと理解できていれば、頭で考えれば正解が導けるはずです。正解はaの男が先で女が後です。

男が先だと、精子は酸性の腟内でどんどん焼け死んでしまいます。しかしできるだけ早く女性をいかせてあげればいいのです。男性諸君、自分だけ気持ちよくなってゆっくり休んでいてはいけません。自分が先にいってしまったときは、あの手この手を使って、可及的速やかに奥さんをいかせてあげなさい!女性の方は、「あなたばっかり気持ちよくなって、さっさと私をいかせなさいよ!」と催促しましょう。

ではbの 女が先、男が後の場合はどうなるでしょうか。女が先にいっているので、膣内は弱アルカリ性になっています。後から膣内に射精された精子は酸で焼け死ぬことはありません。しかし子宮ヒクヒクによる精子の吸い上げが働かないため、妊娠確率は格段に下がります。精子が自力で泳いで卵子にたどり着くのは無理ですから。女性をもう1回、いかせればいいのですが、女性と言えども普通は1回しかいけませんよね。

「俺はテクニシャンだから、簡単に女を先にかせてやるぜ!」と自慢する男性は、残念ながら奥さんをなかなか妊娠させられないでしょう。

さて、生でやっちゃうけど、なるべく妊娠したくないカップルはどうしたらよいでしょう。一番は女性がいかないことです。それでは男だけ気持ちよくなって、男女不公平だ!という場合は、女が先で男が後が良いですね。

産婦人科の不妊治療ではタイミング指導というのがあります。しかしこのタイミング指導は、基礎体温を測って排卵日のタイミングを指導するだけです。男性と女性が同じタイミングでオーガズムに達するのが最も妊娠成功率が上がる、という指導は、普通はされていないようです。産婦人科の先生、ぜひともこの記事の内容をカップルに説明してあげてください。

ここで説明した性交と受精の仕組みは巷では意外と知られてません。日本は少子化で困っているし、不妊で悩んでいるカップルは多いです。それなのに、学校では避妊方法の性教育はされますが、どうすれば妊娠しやすくなるかは教えてくれません。ここに書かれていることを性教育に取り入れてもらえれば、不妊で悩むカップルも激減すると思うのですが。学校の先生、ぜひ学生たちに教えてあげてくださいね。

--

--

富士高原

精神疾患の多くは、病気というより生き残るための仕組みであるという観点でとらえている。ブログでは、精神疾患の進化的起源についての記事をたくさん書こうと思っている。